Wednesday, 01 April 2026

「リオグランデ川に壁は造れない」 トランプ氏を笑う不法移民

「リオグランデ川に壁は造れない」 トランプ氏を笑う不法移民

「送還されてもまた渡るだけ」  取り締り強化でも、国境は長い …

2017年4月15日

「メキシコ国境に壁を造る」と宣言したトランプ政権が不法移民の取り締まりを強め、メキシコへの強制送還が相次いでいる。

一方、国境の半分以上を占めるリオグランデ川に壁や柵はほとんどない。

国境のメキシコ側では、不法移民らが「送還されてもまた渡るだけ」「川に壁は造れない」とトランプ大統領を冷ややかに笑っている。

「トランプのくそったれ!」 オレンジ色の網袋に、わずかな私物を入れた男らが橋を歩いてきた。

テキサス州ラレドとメキシコ北東部ヌエボラレドの国境。

彼らはバスで連行された強制送還者。

米国に残した妻子を思い、涙を拭う人。

政権を罵 (ののし) る人。

祖国に戻る足取りは一様に重い。

トランプ政権は送還対象を交通違反や万引など軽犯罪にまで拡大、退去手続きを迅速化している。

オバマ前政権下の8年間で送還されたのは約300万人。

トランプ政権発足後、送還ペースはさらに上がっている。

30メートル先の対岸は米国。

3年前の夏、メキシコ人男性のM (28) は薄暗くなり始めたリオグランデ川に足を踏み入れた。

ケガをしないよう履いた靴には、毒グモや毒ヘビよけのニンニクを入れてある。

「怖いのは川辺の生き物だけ。警備はほとんどいない」。

着替えと3回分の食事、飲み水を入れたポリ袋を頭に載せ、肩まで水に漬かって歩く。

深くはないが流れは急だ。

仲間と手を取り合い、岸辺を駆け上がった。

メキシコ中部の貧困家庭に育ったMは2002年以降、4度密入国し4度送還された。

先に渡った兄の住むミシガン州で14歳から皿洗いや掃除の仕事を続けた。

大人になると月3,000〜4,000ドル (約33万~44万円) を稼ぐようになったが、今年3月、交通違反で捕まり送還された。

だが、すぐに戻るという。

「米国には低賃金で汚い仕事をやる移民が必要。簡単だ。また川を渡るだけだ」 ホンジュラス人男性のV (21) は2度目だ。

列車の屋根に乗って国境に到着。

川を渡った直後に見つかり、昨年末、飛行機で母国に強制送還された。

直後に再出発し、今年3月に再び国境にたどり着いた。

トランプ政権はメキシコ経由の密入国者を本国ではなくメキシコに戻すと聞いた。

「ありがたい。何度でも挑戦できる」 「ポジェロ (鶏飼い) 」と呼ばれる密航支援業者の男性G (39) は、これまで500人以上を連れて川を渡った。

渡すだけなら1人1,500ドル。

都市の受け入れ先まで世話すれば6,000ドル。

乾いた服に着替え、何食わぬ顔で正規の国境を戻る。

「取り締まりを強化しても国境は長い」。捕まったことはない。

「川に壁は造れないだろ」と嘲 (あざ) 笑った。


(2017年5月1日号掲載)