強硬な移民対策、国境の町サンシドロに渦巻く怒り
ヒスパニックの住民ら「反トランプ」 へ結束の動き
2015年10月20日
来年11月の大統領選の共和党指名争いで支持率首位の実業家トランプ氏 (69)。
強硬な不法移民対策を掲げ、差別発言でも物議を醸してきた。
サンディエゴの外れにあるメキシコとの国境の町サンシドロでは、ヒスパニック (中南米系) の住民らが怒りを隠さず、結束して反トランプ票を投じようとする動きが芽生えていた。
サンディエゴ南端の町は午後9時を回っていた。
国境のゲートが静かに開き、米警備当局のバスがまた1台、メキシコ側に吸い込まれていく。
国境フェンス沿いに建設され、メキシコからの富裕層や観光客でにぎわうアウトレットモールのすぐ裏手。
このゲートから1日約400人が送還される。
経済、社会的に結びつきを増す米国とメキシコの光と影を象徴する光景だ。
「(不法) 移民のほとんどは真面目に働いている。米国はもう彼らなしでは立ちゆかない。
追い返して、誰がその仕事を引き受けるのか」 メキシコ移民2世であるフェルナンド・クエバスさん (43) のトランプ氏への批判は止まらない。
日中は太陽光パネルを売り、夜は運転手をして生計を立てる。
「最近の会話は半分がトランプの話だ。黙っていられない」 メキシコ国境に巨大な壁を建設し、1100万人を超える不法滞在者を即刻強制送還 —— 。
「メキシコが犯罪と貧困を米国に輸出している」と主張、移民を「レイプ犯」 と呼び敵視するトランプ氏への怒りは収まらない。
しかしトランプ氏は、こうした反発をよそに共和党レースで先頭を走り続けている。
「驚くほど多くの人々が支持している。残念ながらこれが米社会の現実だ」。
サンディエゴで移民の人権擁護に取り組むクリスチャン・ラミレスさん (38)。
ヒスパニック人口の増加におびえる白人たちの “負のエネルギー” がトランプ人気を支えていると語る。
危機感を強めるヒスパニック住民の間では、投票で対抗するため市民権を取得しようとする草の根の動きが出ている。
クエバスさんの母親もその一人だ。
ただ、これが民主党への追い風となるのかは即断できない。
オバマ大統領はかつて、子供の頃に米国に渡った不法移民の滞在合法化に道を開く移民制度改革を提唱したが、議会で抵抗に遭い頓挫した。
ヒスパニックがオバマ氏や民主党に抱く失望感は深い。
「民主党にも改革への意気込みが感じられない。トランプにしゃべらせておけば、自分たちのところに票が来ると踏んでいるかのようだ」。
ラミレスさんはヒスパニックの結束の機運が失われ、問題が先送りされかねないと懸念している。
(2015年11月1日号掲載)