保守思想の再構築必要、トランプ政権誕生の背景を探る
有識者が論文を寄稿する専門誌 “American Affairs”
2017年11月1日
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トランプ大統領を生んだ背景を政治思想の観点から探ろうと、米国内外から注目を集める保守派の若手論客で、有識者らが論文を寄稿する専門誌「アメリカン・アフェアーズ」 を今年2月に創刊したジュリアス・クライン氏 (31) に聞いた。
インタビューでクライン氏は「保守思想は再構築を迫られている」と語った。
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Q: 創刊の理由は。
A: トランプ氏が勝利した大統領選は、格差拡大や外交政策の行き詰まりなど現状を打破できない伝統的な保守主義とリベラルの双方に多くの国民が不満と怒りを感じていたことを浮き彫りにした。
米国民は従来の考え方に代わる何かを求めている。
選挙が突き付けた課題を話し合う新しい取り組みが必要だと考えた。
Q: 政治家や官僚はその課題に気付いているか。
A: 多くのエリートが重要なことを見逃していたのではないかと認識し始めている。
冷戦後の政治を見直し、何を間違え、これから何をしなければならないかを真剣に議論したい。
Q: 政治思想の世界でどんな変化が起きたか。
A: 多くの伝統的な保守系団体が、保守を代表する共和党候補のトランプ氏に批判的だった。
トランプ氏の勝利は崩壊しかかっていた冷戦後の保守思想にとどめを刺したと言える。
保守思想は再構築を迫られている。
Q: 親トランプの雑誌との指摘もあるが。
A: 賛成と反対の両方の立場から論文を掲載している。
トランプ大統領を生んだ『トランピズム』 とも呼ばれる現象を論じる動きは広がっており、新しい形にできないか挑戦している。
Q: トランプ政権の9か月間への評価は。
A: 通商面である程度前進があるが、全般的に見て公約は実現できておらず、まだ何も変えられていない。
イスラム圏からの入国規制策やパリ協定離脱では理由の説明が不十分だったため、必要以上に反発を招いた。
医療保険制度の見直しでは、結局どのような制度をつくりたいかのビジョンに欠けた。
政権は人材が整っておらず混乱している。
Q: 米国益を最優先する 「米国第一」は孤立主義と懸念する声がある。
A: 世界の国が国益を追求する中で米国が利用されていた面はあったと思う。
米国は国益にもっと現実的で正直になるべきだ。
(赤字が拡大している) 米国の貿易は持続不可能で、安全保障面でもイラクやアフガニスタンなどへの介入はうまくいっていない。
失敗した政策を見直すのは当然だ。
しかし、それは米国が世界から手を引くことを意味しない。
現在の国際秩序は米国が主導して構築したものだ。
国際社会は過剰に心配する必要はない。
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◆ジュリアス・クライン氏:1986年サウスダコタ州生まれ。
2008年ハーバード大卒。
銀行勤務を経て『アメリカン・アフェアーズ』誌の編集長。
(*ボストン共同)
(2017年11月16日号掲載)
