米大統領選トランプ氏勝利で苦悩深めるメキシコ
「壁」 建設や北米自由貿易協定 (NAFTA) 再交渉を懸念
2016年11月28日
米国と3,000キロ以上の国境を接し、輸出額の8割が米国向けというメキシコが、米大統領選でのトランプ氏の勝利に苦悩を深めている。
メキシコとの国境に「壁を建設する」方針を当選後も強調しているほか、北米自由貿易協定 (NAFTA) 再交渉なども打ち出しており、メキシコの政治・経済への大きな影響が懸念されるからだ。
「メキシコと米国との関係の新たな章が開かれる」。
米大統領選から一夜明けた11月9日、メキシコのペニャニエト大統領は「変化や挑戦」が待ち受けているとして国民の協調を求めた。
トランプ氏の勝利が確実になった直後、メキシコの通貨ペソは対ドルで急落し、1ドル=21ペソ (約115円) 近辺と過去最安値を付けた。
メキシコの中央銀行は11月17日、政策金利を0.5%引き上げると発表した。
通貨価値防衛策とみられる。
トランプ氏は米国、メキシコ、カナダが参加するNAFTAも批判し、メキシコからの輸入品に高関税を課すと訴えている。
もし実行すれば、米国への自動車輸出の拠点として発展を続けてきたメキシコにとって大きな打撃だ。
人件費の安いメキシコにはトヨタや日産、ホンダ、マツダといった日本の自動車メーカーも工場を展開しており、トランプ政権の政策次第では運営の見直しを迫られそうだ。
メキシコとの国境に壁を建設し、「建設費はメキシコに払わせる」と選挙戦で主張してきたトランプ氏に対し、メキシコのルイスマシュー外相は「壁の費用を支払う構想はない」と早々に牽 (けん) 制。
同国外務省は米在住の自国民支援のため、電話相談を24時間受け付けるホットラインの設置や、身分証明書発行の迅速化などを在米大使館と50ある領事館に命じた。
不法滞在者の中には自主的に帰国する動きも出ている。
トランプ氏が、不法移民を含むメキシコ人による本国送金を制限するのではないかとの懸念もある。
ロサンゼルス・タイムズ紙によると、昨年の送金額は約250億ドル (約2兆8000千億円) とメキシコの2番目に大きな外貨収入源で、そのほとんどが米国からとされる。
(2016年12月16日号掲載)