AT&Tがタイムワーナー買収、通信・メディア融合加速
動画とモバイル端末の未来像、ハードルは飽和市場と独占禁止法
2016年10月23日
通信大手AT&Tは10月22日、メディア・娯楽大手のタイム・ワーナーを854億ドル (約8兆8000億円) で買収することで合意したと発表した。
CNN-TVや映画のワーナー・ブラザースを傘下に持つタイム・ワーナーを取り込み、通信インフラと映像コンテンツなど豊富なソフトを併せ持つ巨大企業が誕生する。
AT&Tのランドール・スティーブンソン最高経営責任者 (CEO) は「互いに補強し合う完璧な組み合わせだ」と話し、今後は携帯電話向けの動画配信を強化する考えを示した。
スティーブンソンCEOは「動画の未来はモバイル端末に懸かっている。
また、モバイル端末の未来も動画に懸かっている」と語る。
AT&Tは買収決定に関する声明の冒頭、スマートフォンなどの端末と動画の組み合わせに成長の鍵があると強調した。
スマホ向け動画配信でAT&Tとタイム・ワーナーの統合の強みを発揮できると考えている。
また、スティーブンソンCEOは「優れたコンテンツは常に勝利する」とも言い切った。
AT&Tは今後、1億3000万の端末契約者に多様な動画を配信できるようになる。
AT&Tは米携帯通信分野の二大事業者の一つ。
近年は衛星放送分野にも触手を伸ばしてきた。
一方のタイム・ワーナーは、映像コンテンツの幅の広さ、質の高さで米国随一を誇る。
CNNニュースや映画『ハリー・ポッター』など分野は硬軟を問わない。
ただ、通信、メディアとも市場が飽和していて、現状では高い成長が望めないのも事実。
携帯通信分野では安値競争が著しい。
メディアを見渡せば、スマホやタブレット端末の普及で人々は映像をネットフリックスなどインターネット経由で見るようになり、特に有料ケーブルテレビ (CATV) は厳しい環境に置かれている。
買収が成功するかどうかは予断を許さない。
AT&Tがタイム・ワーナーのソフトを独占し、露骨に視聴者の囲い込みを目指すようだと規制当局の干渉は避けられないからだ。
連邦通信委員会 (FCC) は独占禁止法 (反トラスト法) に抵触しないか厳しく審査するとみられている。
他社に対して映像を販売する場合でも「価格をつり上げないよう司法省が規制に動くかもしれない」 (市場関係者) との見方もある。
米国はテレビ番組のインターネット配信でも先行している。
CBSは2014年、自社番組をネットに同時配信する「オールアクセス」を開始した。
日本では総務省がネット同時配信の全面解禁に向け動きだしたばかり。
一歩先を行く米国の動きが日本の通信、メディアの動向に影響を与える可能性もありそうだ。
(2016年11月16日号掲載)