正念場のトランプ氏、惨敗の危機感から陣営刷新も…
常識はずれの言動、共和党議員123人が公開書簡で懸念
2016年8月6日
11月の大統領選投票まで3か月を切った。
共和党のトランプ候補は手痛い失言が相次ぎ支持率が急落、正念場を迎えている。
民主党のクリントン候補に惨敗するとの見方も出始め、共和党内では8年ぶりの政権奪還に悲観論が拡大。
陣営刷新で巻き返しを狙うが、ホワイトハウスへの道は険しさを増すばかりだ。
「無鉄砲なトランプ氏が民主党に地滑り的勝利をもたらす危険がある」。
下院議員を含む共和党の123人が名を連ねた8月16日付の公開書簡は、このままではトランプ氏という「重り」によって、党が「溺死」しかねないと強い危機感を訴えた。
常識外れの言動で熱狂的な人気を集めるトランプ氏は共和党大会後の7月下旬、支持率が一気に上昇して一時、クリントン氏を抜いた。
だが、イラクで戦死した米兵の遺族を中傷し、激しい非難を招いて失速。
クリントン氏暗殺を促すような発言も「一線を越えた」と党内外から猛反発を受け、最新の世論調査平均値では支持率で約6ポイントの後れを取る。
2012年の大統領選で全米50州の結果を的中させた統計学者ネイト・シルバー氏は、現時点では「極めて勝ち目が薄い」 とし、得票率で10ポイント以上の差で惨敗する可能性もあると分析する。
「スタッフたちは自殺したいような心境だ」。
幅広い支持を獲得するため穏健姿勢に転じるよう進言してきた参謀ポール・マナフォート氏に近い関係者は、米国人記者に内情を明かした。
苛 (いら) 立ちを募らせ、低迷の責任をメディアに転嫁するような言動が目立ち始めたトランプ氏。
集会では報道陣を指さし「最も低俗な生き物」と呼ぶなど敵意むき出しだ。
「米国民にとって最も偉大な擁護者になる」。
8月15日、オハイオ州ヤングスタウンで演説したトランプ氏はプロンプター (原稿映写機) を使い、発言を抑制した。
ところが、穏健路線への期待は2日後に発表された陣営人事で見事に裏切られた。
マナフォート氏は事実上の降格となり、保守系ニュースサイト会長だったスティーブン・バノン氏が最高責任者に就任。
共和党主流派やクリントン氏への批判の急先鋒で、陰謀説を振りかざし物議を醸す人物として知られ、共和党内では「党の将来が危うくなる」と落胆の声が上がる。
トランプ氏は8月18日の集会で、過激発言を「後悔している」と謝罪したが、文字通りに受け取る向きは少ない。
「最も危険な政界仕掛け人」 (米誌) と呼ばれるバノン氏の起用こそが、これまで快進撃をもたらした攻撃的な選挙スタイルを重視している証拠だからだ。
既存政治への不信感を募らせる有権者は「型破りの変革者」を選ぶと信じるトランプ氏だが、8月18日付のワシントン・ポスト紙は「勝利にはかなりの幸運が必要だ」 と指摘した。
(2016年9月1日号掲載)