政策金利の引き上げ時期めぐり、FRB内部で温度差
世界経済の減速の余波、イエレン議長の判断難しく
2015年10月29日
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| © GongTo |
米連邦準備制度理事会 (FRB) が9月に続いて政策金利の引き上げを見送った。
世界経済の減速の余波は米国にも押し寄せ、利上げをめぐるFRB内の温度差も表面化。
「年内の利上げが適切」と繰り返してきたイエレン議長は難しい判断を迫られる。
「次回 (12月) での利上げが適切かどうかは雇用と物価の状況を評価して決める」。
FRBは10月末に発表した連邦公開市場委員会 (FOMC) の声明で、年内利上げの可能性があることを明言した。
金融政策を決めるFOMCの年内開催は12月15~16日の1回だけ。
半面、市場関係者の利上げ予想は12月から来年3月まで大きく割れている。
イエレン氏は9月24日の講演で「私を含め、大半の参加者は年内の可能性が高いと予想している」と述べ、FOMCは年内利上げが多数派であることを、ことさら強調してみせた。
利上げは来年との観測が市場に広がるのを牽 (けん) 制する狙いだった。
ところが、年内の利上げに慎重な意見はイエレン氏の身内であるFRBからも飛び出した。
ブレイナード理事は10月12日の講演で「米景気が落ち込むリスクが減るまで利上げは待った方がいい」 と発言。
翌日にはタルーロ理事が米テレビ番組で「現時点では利上げが適切とは思わない」 と追随した。
FOMCの委員であるNY連邦準備銀行のダドリー総裁は「年内の利上げが好ましい」 との見解。
FRBのフィッシャー副議長もイエレン氏を支持するが、2人とも年内の利上げは経済情勢次第で「約束ではない」と予防線を張り始めた。
中国経済の減速は原油や金属など一次産品の価格下落を引き起こし、資源を産出するアジアや南米、中東の新興国の景気も揺さぶっている。
日米欧の金融緩和政策が生んだ巨額の投資マネーは、新興国に見切りを付け、利上げが予想される米国に逆流し、ドル高の要因になっている。
米国からの輸出は落ち込み、企業の生産活動も鈍化。
9月の雇用統計は就業者数の伸びが景気回復の目安の20万人を割り込んだ。
中国経済の変調が巡り巡って、米景気の足を引っ張っている。
FRBが前回、利上げ局面に入ったのは2004年だった。
当時の議長は 「マエストロ (名匠)」と称賛されたグリーンスパン氏。
政策金利を年1%に据え置いた5月も、0.25%の利上げを決めた6月もFOMCでの決定は全会一致で、求心力の高さを見せつけた。
イエレン氏が采配を振るうFOMCは今回も前回9月も、金融政策の引き締めに積極的なリッチモンド連銀のラッカー総裁が利上げを主張し、全会一致ではなかった。
市場の意表を突いて利上げを強行すれば、株価や為替相場の乱高下は避けられない。
そればかりか、イエレン氏への信認に傷がつく恐れもある。
(2015年11月16日号掲載)
