巨額減税などの奇策、レーガノミクスに似た大型税制改革?
トランプ次期政権の経済政策基本方針、ドル高が景気に冷や水も
2016年12月7日
トランプ次期政権の経済政策が浮かび上がってきた。
巨額減税を優先し、雇用維持には奇策もいとわない方針だ。
ただ、減税による財政悪化がドル高を加速させ、景気に冷や水を浴びせる恐れもある。
「海外に移転すれば重い税金が課されるだろう」。
トランプ次期大統領が12月1日に企業への報復措置を予告すると、聴衆から大歓声が沸き起こった。
演説会場は工場閉鎖が後を絶たない 「ラストベルト (錆びた工業地帯)」 の中西部インディアナ州。
雇用にはとりわけ敏感な地域だ。
トランプ氏は6日にソフトバンクグループの孫正義社長と会談し、米国で5万人の雇用を創出する約束を取り付けた。
4日にはツイッターで、企業が海外に移転した工場から逆輸入した製品に「35%課税する」と表明。
強硬姿勢の背景には、メキシコに工場を移そうとしていたインディアナ州の空調設備会社キヤリアを選挙中に繰り返し批判し、計画撤回に追い込んだ実績がある。
だが、実際に重税が課されれば、大企業は国際戦略を見直さざるを得なくなる可能性が高い。
トランプ氏の強引な手法に、サマーズ元米財務長官は「ルールと法律に基づく米国の資本主義を永遠に傷つけかねない重大な問題だ」と警告する。
環太平洋連携協定 (TPP) 脱退を掲げる通商戦略には不透明感が漂う。
通商協定の目的を、オバマ現政権の輸出拡大から、国内産業保護へと転換するのがトランプ氏の経済政策の特徴だ。
トランプ氏は、11月のビデオ声明で「大統領就任日にTPP脱退を通告する」と表明。
代わりに、各国と個別に協定を結ぶと訴えた。
しかし、2国間の協定が合意に達するハードルは高い。
「米国第一主義」を掲げるトランプ政権は自国の市場開放は最小限に抑える一方、TPPよりも高水準の貿易自由化を相手国に迫る公算が大きいためだ。
トランプ氏が海外への雇用流出の「元凶」とみる北米自由貿易協定 (NAFTA)の再交渉も、相手国のカナダやメキシコが応じる保証はない。
12月6日のNY株式市場のダウ工業株30種平均は2日連続で過去最高値を更新した。
年4%成長を目指すトランプ政権への期待感を背景に円安ドル高も進んでいる。
特に好感されているのが法人税や所得税などの減税だ。
金融大手ゴールドマン・サックスの元幹部で、財務長官に指名されるスティーブン・ムニューチン氏は「レーガン政権以来の大規模な税制改革」と胸を張る。
レーガン政権は1981年に5年間で約7500億ドル (約85兆円) の減税を決めた。
景気は拡大したが、財政赤字が膨らみ国債を増発したことで長期金利が上昇し、ドル高が進行。
貿易赤字が拡大し、米国は「双子の赤字」に苦しんだ。
次期政権はレーガン政権の二の舞いになりかねない。
「ドル高は製造業の成長リスクになる」 (米金融大手のエコノミスト) との懸念も出始めている。
(2017年1月1日号掲載)