揺らぐ「オバマケア」、保険会社が制度運用に反旗
経営悪化から業界再編の動き、大統領選の争点の一つに
2016年9月13日
オバマ政権最大の政治的遺産になると位置づけられる医療保険改革「オバマケア」が揺らいでいる。
改革の担い手となる米保険業界が不採算を理由に関連事業を縮小し、制度運用に反旗を翻 (ひるがえ) しているためだ。
業界再編をめぐる政府との対立も影を落とし、11月の大統領選で争点の一つとなっている。
***** オバマケアは、2010年に成立した医療保険改革法に基づき2014年に本格実施された。
日本のような国民皆保険制度がない米国で、保険加入率を高めることを目指した改革は民主党リベラル派の長年の悲願だった。
改革法は、低所得者向けの公的補助金を通じて全国民に保険加入を義務付けた。
保険会社に対しては、顧客の既往症を理由に加入を拒むことを禁じた。
このため「病気になるリスクが高く、コストもかかる加入者が増えた」 (保険関連協会の報告書) とされる。
保険会社は保険料を引き上げて対応したが、保険金の支払い増に追い付かず、経営が悪化した。
今年に入り、米医療保険最大手ユナイテッドヘルス・グループは、オバマケアに基づく個人向け保険を販売する34州の大半から撤退すると表明。
3位のエトナも販売地域を来年には15州から4州へ大幅縮小すると発表した。
改革は行き詰まりつつある。
***** 事業の効率化による収益向上を目指して保険業界は大胆な再編を模索した。
昨年7月、エトナが同業4位ヒューマナを、2位アンセムが5位シグナを買収する計画を、それぞれ発表。
大手5社が3社にまとまり、経営基盤を強化する構想だ。
ところが 「寡占化により保険料が高騰する」とにらんだ米司法省は今年7月、独占禁止法 (反トラスト法) 違反で、これらの買収計画撤回を求め提訴し、再編の実現は怪しくなった。
エトナが今回、販売縮小を発表したのは、提訴に対する意趣返しとみられている。
大統領選を控え改革の行方は定まらない。
共和党のトランプ候補は制度廃止を訴える。
一方、民主党のクリントン候補は拡充を主張するが、民主党寄りの論者にも制度見直しを求める声は多い。
論点の一つである保険加入を促す公的補助金の支出を巡っては、連邦最高裁が2015年に合法との判決を出した。
経済学者のポール・クルーグマン氏は米紙に寄稿し、補助金の拡大などで「もっと健康な人に保険に加入してもらう仕組みが必要だ」と指摘している。
(2016年10月1日号掲載)