Friday, 27 March 2026

共和党大会、不動産王トランプ氏を大統領候補に正式指名

共和党大会、不動産王トランプ氏を大統領候補に正式指名

「トランプ大統領」 の世界は予測困難、米国内外に広がる懸念

2016年7月20日


共和党が7月19日、政治経験のない実業家ドナルド・トランプ氏 (70) を大統領候補に正式指名した。

不動産ビジネスで成功した手法は「全ては交渉。

気に入らないなら席を立つ」。

国家指導者として打ち出す政策には予測し難い部分が多い。

「トランプ大統領」 が誕生すれば世界はどうなるのか。

トランプ氏は米国内外に広がる懸念を払拭する必要に迫られている。

失業率は上昇、財政赤字は拡大、マイナス成長も ―― 。

ある調査会社によるトランプ政権下の米経済予測は、トランプ氏のスローガンである「偉大な米国の復活」 に逆行する内容だ。

トランプ氏が掲げる不法移民の強制送還を実現すれば、重労働の担い手不足を招く。

さらにTPPに反対する通商政策でも米経済はグローバル化から取り残され、成長は鈍化するという。

トランプ氏の政策が全て実現した場合の「最悪シナリオ」 に基づけば、任期1期目が終わる2021年に、現在約5%の失業率が7.3%まで上昇。

米経済のブレーキは世界経済を直撃する。

トランプ氏は温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」からの脱退も表明。

米政府特使を務めたトッド・スターン氏は、米紙への寄稿で「そんなことをすれば米国の信用や影響力は地に落ち、外交上のダメージは計り知れない」と警告した。

トランプ氏の真意を測りかねているのは日本政府も同じだ。

「日米安全保障条約は不公平」と主張するトランプ氏は4月に発表した外交政策で、米国の軍事力の恩恵を受ける日韓などの同盟国に「さらなる財政貢献」 を要求している。

「十分に負担している。これ以上求めるつもりなのか」。

米軍の駐留経費負担交渉に当たってきた防衛省幹部は呆 (あき) れ顔だ。

米国務省当局者も 「無知のなせる技」 と顔をしかめる。

しかし、トランプ氏の外交政策顧問ワリド・ファレス氏は共同通信に、米軍駐留経費の負担増を日本側に「必ず求める」 と明言した。

トランプ氏がちらつかせた日本の核武装容認論は、米政府の「180度の政策転換」 (外務省幹部) として、日本政府を驚かせた。

しかし、共和党は党大会で採択した綱領で、米国の核抑止力がある限り「同盟国が核拡散に関わる必要がない」 よう関係を構築すると明記、トランプ氏の主張を事実上封印した。

日本政府の懸念は尽きない。

注目せざるを得ないのはTPPの行方だ。

共和党の綱領はTPP推進から一転、トランプ氏と足並みを揃え、承認先送りを念頭に置いた記述が盛り込まれた。

メディアの間では政策だけでなく、トランプ氏の資質を問う論調も目立つ。

英誌エコノミストは「起伏の激しい気性の人物が、核兵器も意のままに使える世界最強の軍の司令官として、即断を迫られる事態」 を最も憂慮すべきだと指摘した。


(2016年8月1日号掲載)