NYの名門音楽スタジオ「マジックショップ」閉店へ
家賃高騰、デビッド・ボウイさん死去直前のアルバムも収録
2016年3月14日
世界的ロック歌手の故デビッド・ボウイさん、人気シンガー・ソングライターのノラ・ジョーンズさんらが愛用してきたニューヨーク・マンハッタンの音楽スタジオ「マジックショップ」が家賃高騰のあおりで3月中に閉店することになった。
マンハッタンではライブハウスなどの閉店が相次いでおり、行政による対策の必要性を訴える声も出ている。
「スタジオを閉じなければならないことにも、この街で起きていることにもすごく戸惑っているよ」。
経営者スティーブ・ローゼンタールさん (62) が溜め息をついた。
ボウイさんは死去直前の1月に発表したアルバム 「ブラックスター」 をこのスタジオで収録。
生前、もう一度マジックショップでレコーディングしたいと話していたという。
「ロックの大御所」と呼ばれた故ルー・リードさんも利用していた。
1988年にオープンした当時、スタジオのあるソーホー地区は治安が悪く、賃料も安かったという。
「オープン祝賀会の夜に家族が車上荒らしに遭ってね」とローゼンタールさんは振り返る。
だが、芸術家が拠点を構え、文化の薫りが漂う雰囲気が富裕層を呼び込み、人気のエリアに。
今やソーホーには高級ブランドショップなどが立ち並び、地価や賃料は跳ね上がった。
ミュージシャンに支持され、地道に営業を続けてきたマジックショップの家賃も現在月12,000ドル (約140万円) 以上となり、負担が大きい。
ローゼンタールさんは最近になって、著名な音楽関係者らの支援を得て入居フロアの買い取りを模索したが、交渉はまとまらず、退去を余儀なくされた。
ローゼンタールさんは交渉の詳しい経緯は明らかにできないとしているが、米メディアによると、今の相場なら月額45,000ドルでも借り手が付くとの試算もある。
「俺たちを追い出せばもっと金を稼げるという訳さ」 スタジオで2月下旬に収録していたギタリスト、トム・ケスラーさんは「このスタジオはエネルギーにあふれ、創作意欲をかき立ててくれる。
こんな環境はまれなのに …」と惜しんだ。
マンハッタンでは2000年以降、家賃の高騰で、ロックの殿堂として知られた名門ライブハウス「CBGB」、ジャズトランペットの帝王の故マイルス・デイビスも演奏した老舗ナイトクラブ「ボトムライン」などが閉店に追い込まれた。
ローゼンタールさんは 「自分はここで素晴らしく幸せな時間を過ごせた。
今の若いアーティストたちのことが気がかりだ」 と話す。
「家賃や立ち退きを心配せずに活動できるよう、行政が関わる形で音楽やアートの 『安全地帯』 をつくるべきじゃないか」 —— とも。
(*写真はイメージ)
(2016年4月1日号掲載)